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板金折り曲げ機の製作

主催者はコントローラーの製作などで良く板金加工をします。金属板の曲げは小さい物なら万力で
挟んでハンマーで叩けばいいのですが、コントローラーのケースの様に幅がある物は簡単には曲げ
られません。どうするのかと申しますと、鉄の角パイプ2本で鉄板を挟み、それを万力で固定して
ハンマーで叩きます。製作例を申しますと、トリプルコントローラーの製作で記載があります。
この方法は少しずつ曲げるので加工途中で修正が出来る利点があるのですが、準備が面倒ですし、
ハンマーで叩くのはかなりしんどい作業です。またそれ以外にも、ステンレス等の固い材料を短い
ピッチで2段に曲げるのも相当しんどいです。厚さ2ミリのステンレスを1㎝ぐらいの間隔でコの字
型に曲げるのは本当に大変ですし、もし行ってもキレイに出来ません。実は主催者はかなり以前に
ハンド式の板金折り曲げ機を購入しています。下の写真の物です。この装置で厚さ1.6㎜の鉄板を
加工して見ましたが、どう頑張っても上手く出来ませんでした。曲げがシャープに決まらず大きな
Rになってしまう上に、端と中央部でRにムラがあります。この装置は厚さ1㎜以下のアルミ、又は
真鍮板向けの様でした。




それでは厚板向けの折り曲げ機がどの様な方式で曲げるのかと申しますと、V字型の溝(90°)が
切ってある台座(その名もダイと言う)と同じくV字型の刃(こちらはパンチと言う)で鉄板をプ
レスして曲げます。厚板の場合は力が要るので油圧が使われます。で、素人工作の場合油圧メカは
どうするのか?と申しますと、油圧ジャッキを使うのです。油圧ジャッキ=油圧プレスなので、こ
れを利用すれば色々な道具が作れるのは車関係の雑誌では昔からよく言われていました。下の写真
が主催者が入手した油圧ジャッキです。日本製、15トンの物を採用。




油圧ジャッキは全高がなるべく低い物を入手しました。ストロークはそんなに必要無いし、高さ
があるとそれだけ装置の高さも高くなってしまいますからね。油圧ジャッキが入手出来たら装置
の設計に入ります。希望としては幅70㎝、厚さ2㎜のステンレス板が曲げられるといいのですが
そこまで求めると装置は相当大きくなるし、油圧ジャッキも2本いると思われます。なので最大
幅は40cmで行く事に決定。仕様が決まったらフレームとなる材料を用意します。上下の部分は
幅10㎝の溝型鋼、上下を繋ぐ柱の部分は厚さ9㎜のフラットバーを使用。




組み付けは溶接では無くボルトで行います。馬鹿力が掛かる部分ですし、素人工作なのでボルト
の方が安心です。直角及び上下左右の寸法が出ている事を確認してボルト穴を開けます。次に油
圧ジャッキの取り付け台座を作ります。下の写真右は大方の材料を揃えたところ。基本的に分厚
い鉄のカタマリです。一般的にこういう装置は重さも性能の内ですからね。




装置の構造ですが、一番下に油圧ジャッキを設置、その上に可動パーツが付きます。その上には
曲げ加工を行うダイが乗ります(下の写真で金色のパーツ)。ダイとプレスはオークションで良
さそうなパーツを見つけましたのでそれを採用しました。ダイの方は3つの溝が切ってあります
がポイントは一番小さな溝。この溝は端に寄っています。狭いピッチでクランク型に曲げる時は
V溝が端にある事が重要なのです。例えば一番大きな溝ではダイ自身の端からV溝のセンターまで
の距離が23㎜ありますがこれが最低ピッチになります。なお購入したダイとパンチは長さが30cm
の物。40cmの物があると良かったのですが無かったのでこれで妥協。これはまた今後パーツを探
す事にします。




実のところダイが上昇して曲げるより、パンチが下がって曲げを行う方が感覚的にはいいと思い
ます。業務用のメーカー品は全てパンチが下がるはずです。しかしその為には油圧ジャッキのプ
レスが下に伸びなくてはなりません。そうなると普通のジャッキでは無く下に伸びる油圧プレス
が必要になりコストが上がってしまいます。無理やり油圧ジャッキを上に付けてジャッキの底で
押す方法もありますが頭でっかちになってスマートではありません。なので自作で折り曲げ機を
作る場合、ほとんどの方がダイの方を上昇させる方式を採用している様です。

さて、製作ですが下の溝型鋼には足を付けます。足を付ける部分は溶接で行いました。下の写真
右ではすべての穴明けが終わってペンキを塗っています。溝型鋼の奥にある小さい金具2つが足
になります。ペンキを塗るのはこの部分だけで後はそのままで行く事にしました。




全ての準備加工が終わりました。いよいよ組み立てです。組み立てはまず可動パーツのガイド軸
から行います。ガイド軸はリニアシャフトとリニアブッシュを使いました。これは本来精密なス
ライド動作を行わせる為に使う物です。板金折り曲げ機の場合、精度はあまり必要ないのですが、
とりあえず使ってみました。精度が要らない理由は、パンチは固定されるがダイは可動パーツに
置いてあるだけ。なのでガタがあってもその部分で吸収されてしまうのです。下の写真右は可動
パーツを付けたところ。ここでもしリニアシャフトがハの字型になっていると動作が悪くなって
最悪ですが、スムーズに動きました。良かった良かった。




どんどん組み立てます。溝型鋼と上下を繋ぐ柱のボルト穴はボルトよりも僅かに小さい穴を開け
てあり、2つまとめてタップを立てて繋いでいます。これは小さめの穴で仮組をしておき、本組
の時改めてドリルを通して位置決めするのです。ほぼガタが無い組み付けになりますので、今後
も狂いが出にくいはず。最後に油圧ジャッキのリターンスプリングを付けます。この油圧ジャッ
キ、15トンもある為かバルブを緩めても引っ込みません。本来はジャッキだから上に乗る車とか
の重さで勝手に下がる物だからねえ。それでスプリングで戻すわけです。下の写真右はダイとプ
レスの開口距離を見たものです。完全に並行では無く、0.3㎜ぐらいの差があるのですが、これ
ぐらいならリニアブッシュが吸収してくれるので、もうこれで行きます。




最後に足を取り付けます。足は柱のボルトとの干渉を避ける為、かなり下の位置に穴を開けたの
ですが、ちょっと下過ぎた。足はL金具ですがL部分のRにボルトの頭が干渉してしまいました。
上の写真で足が付いていますが、この時点では上手く付いておりません。これは穴を少し広げ、
更にL部分のRを平らに削り取って取り付けました。穴を大きくするとガタが出る訳ですが、接地
面の凸凹に対し調整が出来る事が分かり、かえって好都合。下の写真右がついに組み立て完了し
た折り曲げ機。




さて遂に曲げる時が来ました。まずはそこら辺に転がっていた鉄板の切れ端(厚さ1.6㎜)を曲げ
てみます。お~楽勝だ。これはクランク型に曲げてみました。では次にステンレス板(厚さ2㎜)
を曲げます。こちらは硬い分ポンプの駆動が先に比べてやや重いぞ。しかし楽勝。後は暫く使って
みてどうなるかだね。これでくそえらい曲げ加工から解放されます。これでコントローラーのメカ
製作はかなり楽になるでしょう。しかし主催者のコントロールパネルの横幅は40cmなのでやはり
将来的には40cmの曲げに対応させたいものです。




装置は完成しました。実際のポンプ駆動時には下の写真左の様にパイプを使ってジャッキUPさせ
ます。本機は上下のフレームに溝型鋼を使っていますから、そこにパイプとダイが収納出来る事を
発見。こりゃ便利だ。




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